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雑記

更新日:2003.9.22

MDとシリコンオーディオ(ATRACとATRAC3)についての考察

 久しぶりの雑記は、大変久しぶりのパーツ以外の話題となります。

 話の発端は、引っ越したばかりの私の家に友人Hが来るところから始まります。このときに、ADSLっていいなぁ、などとその速度に酔いしれながらインターネットを徘徊していました。そして、なぜかYAHOOオークションなどを徘徊しているうちに「最近MP3プレイヤー系のものが欲しい」という告白からSONYのATRAC3対応のポータブルオーディオを探し始めます。しかし、その価格の高さに「果たして本当にこのデバイスは買う意味があるのだろうか」というところに行き着いてしまいます。そもそも、買う価値を見いだしてからオークションを見ればいいと言うのに、なぜだか先に買う計画を立てようとしているところが恐ろしいというか、なんというか・・・。

 ところで、MDLPに関しては非常にこれまでネガティブなイメージしか抱いていませんでした。というのは、「音を悪くして長時間録音でしょ?」という部分が、音に対するこだわりに反するのです。しかしながら、最近はシリコンオーディオプレイヤーを使っていたり、MP3の音に慣れていたりして、「これくらいの音ならいいねぇ」という妥協というか、慣れ、というのが出てきた現在では、、、「MDLPって便利でええかも〜」となってきてしまったのです。

ATRACとATRAC3とは・・・

 ATRAC(Adaptive TRansform Acoustic Coding)というのは、マスキング効果などを利用した音声圧縮符号化技術です。
 基本的に不可逆圧縮を行っており、マスキング効果などを利用してはいますが音を省く作業というものが存在している以上、CDに比べると音痩せなどは避けられません。しかしながら、初代ATRAC DSPが作られて以来、さまざまな改良がされており、音質も向上しております。そのため、CDの音と区別をつけるにはそれなりのシステムでなければできない、というくらいにまで音質が向上しています。
 また、ATRAC3というものもでてきています。これは、ATRACのVersion3という意味ではなく、ひとつの独立したものです。で、このATRAC3というものですが、ネットワークに対応するために作られたのではないか、と考えられるような変更がATRACから行われています。基本的な考え方は、マスキングなどを利用した人間の耳に違和感にならないような圧縮を行っている、というものでしょうが、それに加え、さらに必要とする容量を下げるための努力がされているようです。また、著作権保護も考えられており、うかつなコピーはできないようになっています。ちなみに、最近出てきたMDLPというのはATRAC3である、とのことです。

ATRAC3の聞き比べ

 さて、ATRAC3に変換するためには、OpenMG JukeboxやSonic Stageなどのソフトが必要になってきます(一般的にATRAC3対応のハードウェアに付属しているのはOpenMG Jukeboxですが、最近はSonicStageに切り替わりつつあるようです)。このソフトで変換を行うとき、ビットレートがいろいろと選ぶことができます。すなわち、132kbps、105kbps、66kbpsの三つです。
 実際に変換するときに、オーディオマニアにとっては、音質は死活問題です。もっとも、オーディオマニアであれば、最高音質を迷うことなく取るのではないか!?という予測も成り立ちますが、一般的には、長時間録音できてそこそこいい音で鳴る、というのが重要ではないかと思います。となるときに、基本的には利用者が何処のレベルまでを許容範囲とするか、という部分に非常にゆだねられるとは思いますが、ここでは1つの評価例として私の耳を使うことにします。
 ここで、ビットレートだけ見ると、最高音質と最低音質で二倍の開きがあります。しかし、音の善し悪しというのは、単なる倍数などという数字で表すことはできません。また、スペクトラムを見ても、その二倍というビットレートがどこにどれだけ影響しているかというのを定量的に見ることはできないでしょう。というわけで、ある程度感覚的にそれを感じ取る、ということで今回のテストを行っております。最終的には、実際に店頭で手に取ったりしてみてご自分で判断していただきたいと思います。

 さて、音楽のソースは、、、余り選んでいませんが、最近アルバムがヒットした「Tommy february6」の「トミーフェブラッテ、マカロン。」を使用しています(なぜその曲なのか・・・理由は全くなく、たまたま目に付いただけです)。さて、以下にその感じたところを記述します。

PCM 1411.2kbps(=44.1kHz×16bit×2ch:オリジナルWaveファイル)

 ギターの演奏している細かいニュアンス、低音感、など非常に満足のいくレベル。というか、普通の人間であれば、これより上の音質で曲を聞くことは非常に稀であるため、これをリファレンスに考える

ATRAC3 132kbps

 多少オリジナルのwavファイルと比べると音痩せしている感じ

ATRAC3 105kbps

 ギターであれば、ギターの音はする。しかし、楽器の細かいニュアンスまでは伝わってこない。破綻はしていないが、オリジナルと比べると音が薄い感じ。

ATRAC3 66kbps

 楽器が演奏されているというよりは、音が「鳴っている」というレベル。ギターであれば、「ギターっぽい音が鳴っている」というのに近い。低音域も薄いし、音に隙間ができているようであり、結果的に音がざらざらとした感じ。リバーブ感もあまりなくなっている。

 耳が肥えている人であれば、132kbpsを取ると思います。しかしながら、メモリーの容量との制約を考えますと、多少我慢して105kbpsという選択もありかと思います。通勤電車専用であれば、実は66kbpsというのもありなのかな、という気はしますが、パソコンをミュージックボックスに、と考えている人にはお勧めできません。
 さて、こちらのページでは、132kbpsでATRACに変換した波形がオリジナルそっくりと語られていますが、実際によく音を聞いてみれば音痩せしていることに気づきます。致命的な違和感などはさすがにありませんが、オリジナルとの差はよく聞けば十分聞き分けられます。

 ところで、ATRAC3対応デバイスと競合になるのはMP3プレイヤーでしょう。こちらの音質も聞き比べてみました。

MP3 128kbps

 ATRAC3 132kbpsよりももっと低音感が強い。音痩せは多少あるが気になるほどでもない

 ということで、MP3 128kbpsの方がATRAC3 132kbpsより音がいいのではないかという結論を私と友人のHは出しました。とはいえ、CODECによって結構音質に差があるため、一概にそう言い切れるものではないかもしれません。ちなみに、音痩せ度はATRAC3 132kbpsの方がより強く感じます。とはいえ、大きな差というのは認められません。

テスト環境
 ・SONY VAIOノート PCG-SR9G/K
 ・SONY MDR-CD900ST(ヘッドホン)
 ・OpenMG Jukebox(ATRAC3試聴用)
 ・WinAMP(MP3試聴用)
 注:オリジナルのWavファイルは、CDからデスクトップパソコンのPlextor PX-W8432TからCD2WAVを使用してリッピング。

ATRACとATRAC3とMDLP

 NetMDは、パソコンなどに記録されたATRAC3をMDにデジタル領域で転送することのできる規格です。MDLPモード4と80分のメディアを組み合わせることにより、最長320分の録音をすることができます。また、MDLPモード2と80分メディアとの組み合わせであれば、160分の録音が可能です。
 MDLPはATRAC3と同じですが、ビットレートでいえば、どれに当たるのでしょうか?MDLPにも2と4があります。OpenMG Jukebox上では、132kbpsがMDLP2で、66kbpsがMDLP4であるみたいです(105kbpsはMDLPの規格にはなく、NetMDでMDに転送するときは132kbpsに変換されるようです)。
 このとき、通常のステレオ録音(=ATRAC)では、80分メディアに80分の録音ができるとあります。とすれば、ATRACのビットレートは264kbps(=132kbps×(160分÷80分))でしょう。と、単純計算ならそうなるのですが、ATRAC(SPモード)のビットレートは実は292kbpsらしいのです。ちなみに、CDのビットレートは1.4112Mbps(=44.1kHz×16bit×2ch)です。となると、1411.2kbps÷292kbps=4.8となるので、MDはCDを約5分の1に圧縮している、ということが再確認できます。

NetMDとMDプレイヤー

 NetMD対応の機器というのはまだ出たばかりで、高価な部類に入ります。また、SONYお得意の一世代目商品は痛い目を見る、というのを考えるとなかなか手が出ないと思います。しかしながら、今回のNetMDに関しては、既存の技術の流用ばかりで成り立っているので、それほどのリスクはないかもしれません。
 さて、今までいろいろと見てきましたが、NetMDにはひとつ大きな落とし穴が含まれています。それは、MDLPというものの正体はATRAC3であって、対応機器はすでに多く出回っている、ということです。となると、わざわざ高価なNetMD対応のプレイヤーを購入しなくても、MDLP対応ポータブルプレイヤーで十分ではないのか?という議論がわいてきます。

 しかしながら、NetMDの一番大きな特徴は、パソコンで管理している楽曲をコピーするようにデジタル領域で直接MDに簡単に転送できる、ということです。MDLP対応の機器であっても、このような機能はありません。
 NetMD自体は、MDLPとパソコン(OpenMG Jukebox)を繋ぐ架け橋のようなものでしかないのかもしれません。

 そのようなわけなので、すでにMDLP対応の機器を持っていれば、NetMD対応の高価なポータブルプレイヤーをわざわざ買う必要はありません。コンパクトで安価な据え置きタイプのものが使えます。ここは、NetMDで録音したものは、NetMD対応の機器でなければ再生することができないような印象を持っている方が多いとは思いますが、それは所詮メーカーのセールストークでしかないのかもしれません。

では、NetMDの利便性は?

 メモリースティックは現在128Mが最大です(256Mのものもそう遠くない未来に出るのではないかと思いますが・・・)。これは、ATRAC3(132kbps)であれば、約128分の録音ができます。一方、NetMDであれば同様の音質で録音すれば160分の録音が可能ですから、容量という点では、NetMDの方がメモリースティックを用いたプレイヤーより有利なわけです。さらに、通常のMDを利用するので、メディアの価格も非常に安いです。一方、メモリースティックを用いたプレイヤーは、非常にメディアが高く、メモリ内蔵タイプであれば、内蔵されたメモリ以上のものは録音できないのです。この点においては、NetMDの方が圧倒的に有利です。
 また、CDを用いたMP3プレイヤーと比べてみると、MP3対応ドライブであれば、128kbpsのビットレートでエンコードしたものに関しては、640MのCD-Rに640分程度は入ります。一枚当たりの容量は、さすがにCDの方が圧倒的に大きいですが、CD-Rというのはサイズ的には大きいもので、MDと比べるとその携帯性は圧倒的な違いがあります。また、携帯性を論じるとすれば、いわゆるシリコンオーディオプレイヤーに軍配があがります。しかしながら、MDのコンパクトさもなかなかのものです。また、先ほど出てきたメディアにCDを用いたMP3プレイヤー/CDプレイヤーは大きさ、重さ共に論外でしょう。

 しかしながら、わざわざパソコンとMDを連携させて外で聞く必要があるのか、という疑問も湧きます。CDからさくっと普通のMDに録音して聞いたらいいんじゃないか、という意見もあるのではないかと。その方が絶対コストも安いです。NetMDにしたときの長所というのは、メディアの入れ替えの必要回数が減ること(しかしこれはMDLPで録音すれば長所にはなりませんが)、パソコンで管理できる、の2点です。どちらも根は「めんどくさいことを減らそう」ということです。場合によっては、NetMDに録音するために、パソコンに録音→NetMDに転送、という二段階の作業が必要になるため、逆にめんどくさい部分が増えているのではないかと思います。

 利便性というところからはずれますが、フラッシュメモリーを採用したプレーヤーというのは、なんかかっこいい、コンピュータっぽい、次世代っぽさが購入欲をそそるウェイトのなかで一番を占めているのかもしれません。逆に、そういうものより実を取るのであれば、絶対的にNetMDまたは既存のMDがいいと思います。

参考資料

  1. NetMD:http://www.sony.jp/products/Consumer/netmd/
  2. minidisc.org:http://www.minidisc.org/index.html
  3. ATRACの移り変わり:http://www.puwa-net.com/minidisc/technical/atracchange.htm
  4. ATRAC技術資料:http://www.minidisc.org/aes_atrac.html
  5. 藤本健のDigitalAudioLaboratory:http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20020128/dal42.htm
  6. スタパトロニクスmobile:http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/stapa/0,,9079,00.html
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